ホロデッキ



Holodeck 3 program is ready !

ホロデッキは Virtual Realityの究極の姿である。

宇宙連邦の船艦は、クルーとその家族を乗せて何年にも及ぶミッションに従事せねばならず、どうしてもレクリエーションに飢える。また、クルーにおいても訓練などを容易に行えるホロデッキは素晴らしく利用価値の高い設備である。

2364年、バイナース人の協力により、より強力なシステムにバージョンアップした。

構造は、出入り口だけある一辺数メートルの立方体の小部屋である。この中に、どこまでも続く大草原や無限の大宇宙を、壁にホログラム投影することができる。また壁以外の空間にも投影できる。

この部屋では実体のない単なるホログラム映像だけでなく、重力制御技術やフォース・ビーム(重力子ビーム:force beam)を併用してあらゆる環境を作り出すことができる。特にトラクタービームの小型版であるフォースビームは重要で、これによって有りもしないものを有るように錯覚させることが可能なのである。ビームは極めて繊細に調節ができるので、例えばホログラムのコップを掴む時には指の一本一本に圧力を与えることによって存在感を演出する。

ホロデッキが全体としてどのように作働するのかを以下に解説する。

ホロデッキ内では、何時間歩いても踏み車のように壁にぶつからない。3次元的に重力をコントロールし、風景も連続的に変化させるために気づかないのである。

もしホロデッキが作りだした荒野の中に立ち、足元の石を思いっきり遠くに投げたとする。最初に掴んだ時はホロデッキマターで出来た「本物」だが、投げた後はシームレスにホログラム化し、いかにも無限の荒野で石を投げたかのように見せられる。五感だけでは現実と虚構の区別が極めて困難で、トリコーダーのような観測装置を用いなければ事実上判別は不可能と言っても良い。

最も簡単にホログラムか現実かを区別するには、一言、『コンピューター、プログラム停止』と叫べばよい。ほとんどこれで用が足りるが、"Ship In A Bottle" [TNG]の場合はコンピューターがロックされてしまったので、この方法は通用しなかった。データ少佐は自分の通信バッジを投げる事により解決した。ホロデッキ内では、ホロデッキが作った物体は変化させることが出来るが、外部から持ち込んだ物(この場合バッジ)には手を出せないのである。彼は“壁”のすぐ近くから胸のバッジを“壁”に投げた。すると存在しないはずの“壁”にコンと当たって床に落ちたのである。これによりモリアティー教授の野望を暴くことができた。(投げた場所が壁から遠いと、コンピューターは後述のキャッチボールのように我々を騙す事が出来る)【この "Ship In A Bottle" [TNG]は本当に素晴らしかった。文句なしの名作だ】

もしホロデッキにいるのが一人だけならば、コンピューターは簡単に人を騙すことができる。では、もし2人で互いに反対方向に走ったらどうなるであろうか。ホロデッキは各人に変わり行く風景を提供できるので、何キロでも走ったように見せかけることができるが、その後互いに振り向いたら2人は相変わらず近くにいるままであることに気づくのではないか?
こうした場合、ホロデッキのプログラムは2人の間にホログラムスクリーンを作り、互いに直接見えなくするのである。お互いを小さく見せて距離感を出すのだ。【この方法は "Unification" [TNG]でロミュランを騙すのに用いられた】

さらに、もし2人が外部から持ち込んだボールを使って100メートル“離れて”キャッチボールをすると(相当の強肩だが)、ボールが手から離れた瞬間にホログラム映像化して先述の仮想スクリーン内に溶け込み、ボールが飛んで行く様を映像で見せながら相手に届く直前にはホロデッキマターになって「実体化」し、フォースビームがボールの速度を調節して相手のグローブに納まるときには衝撃を与えるわけである。この間実際には数メートルの距離であるが、相手にボールが届く時にはひょろ玉になっている。もし人数が増えればそれだけ仮想スクリーンを増やさねばならないので、コンピューターの負担が増える。



大雑把に言えばこのような仕組みであるが、我々はホロデッキの内部で「本物の手触り」を体験することもできる。このような超仮想現実を得るためには、ホログラム映像とフォースビームだけでは全く無理である。やはり何らかの実体が必要となる。

そこで、ホロデッキにはレプリケーターの技術を応用したシステムも組み込まれており、これが食べ物や水や人間の肌などという微妙な感触をも再現する。ホロデッキ・マター (holodeck matter)と呼ばれるこの人工物質は、ホロデッキの特殊な磁場の内部のみで安定な磁気バブルのようなもので、もし外部に出れば消滅する。

Encyclopediaによると、ホロデッキマターはプログラムが終了したりホロデッキの外部に持ち出されたりするとエネルギーに戻るとの事であるから、それ自体は質量を持たない筈である(もし質量があれば、作るときに膨大なエネルギーが必要で、また消滅するときには下手をするとエネルギーが一気に発生して大爆発を起こしかねない)。すなわち、ホロデッキマターだけでは重量感を再現出来ないことになる。よって人間などの映像の場合は中まで全部がホロデッキマターである必要は無く、皮膚や衣服の部分だけホロデッキ・マターであれば十分といえる。ホログラム映像の戦士と戦う際に感ずる力や重量感は、全てフォース・ビームによってまかなわれているのであろう。

ホロデッキ内の水はホロデッキマターで作られるのであるが、これを用いてダイビングや("Conundrum" [TNG])カヤック("Transfigurations" [TNG])も楽しむことが出来る。しかし作られる水は、人が接する範囲の少量のみで、あとはホログラム映像でシミュレートされる。

USS Voyagerや USS Enterprise-Eの医療室は全体が最新鋭のホロデッキとなっており、緊急用医療ホログラムが利用できるようになっている。医師が不在の場合に、本物の医師の代わりにあらゆる医学知識を駆使出来るホログラム・ドクターが登場し、大抵の疾患の治療が可能となっている。

医療室のホロデッキとしての性能は大変優れており、ニーリックスの肺がビディア人によって奪われた時は、ホログラムの肺が体内に移植された("Phage" [VGR])。驚くべき事に、この人工の肺は酸素と二酸化炭素の交換膜構造さえシミュレートしていた。もっともこの時はホロデッキマターを精密にコントロールする必要性があったため、ニーリックスは制御フレームを取り付けられて身動きが出来なかった。

このようにあくまで忠実な再現を目指すホロデッキであるが、直接肌に触れるもの以外は単なる映像の事が多い。そして対象物の置かれる立場が変化すると、シミュレーションの種類もシームレスに変化する。例えば、遠方に樹木を見る(壁の投影)、近づく(ホログラム映像)、もたれる(フォース・ビーム)、枝を折ってリンゴを食べる(ホロデッキ・マター)、という具合である。但し、食べても腹の足しにはならないが。

DS9のクワーク(フェレンギ人)のバーの2階には“ホロスイート”がある。様々なプログラムがあるらしい ("The Nagus" [DS9] etc.)が、もちろん有料で、風俗営業も行っている。ホロデッキやホロスイート内部はレプリケーターの端末のようにもなっているので、糞尿その他の分泌物などに関しては、排泄しても自動的に分解される。

ホロデッキ内では、生命に危険が及ぶ場合には安全プログラムが作動して危険が回避されるが、格闘技の練習などでしばしば肋骨や腕の骨折事故がある。この安全装置を外せば、弾丸で相手を傷付けることも出来る (ST8:First Contact)。しかし不慮の事故によって、しばしば作動不良を起こしている。

TNG Tech Manualによれば、Enterprise-Dには4つの大きいホロデッキがあるが、一人用の小さい物も沢山あるとの事である。Deep Space 9ではホロスイートと呼ばれているが、同様に極めて小さいものと ("A Man Alone" [DS9])、大勢入れるものと ("Blood Oath" [DS9])あるようだ。

容易に予想されるように、ホロデッキは中毒を生む。バークレー中尉のようなホロデッキ中毒 (holodiction)に陥る人々は非常に多いはずである ("Hollow Pursuits" [TNG])。

なお、通常はホロデッキのパワーシステムは独立しているわけではない ("Booby Trap" [TNG])。しかしVoyager号のホロデッキは独立したパワーリアクター (holodeck reactors)を持っており、どういうわけか船のパワーを流用することが出来ないし、その逆も出来ないことになっている ("Parallax" [VGR])。そのため、たとえ船のパワーが不足してもホロデッキだけは利用可能である。



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