フェイザー




Phaser sound
Pulse Phaser (USS Defiant)

我々人類の亜光速宇宙飛行が可能となった時代、もっとも厄介な問題の一つが相対的に亜光速で飛び込んでくるガスや岩石粒子などであった。もちろん超伝導コイルによって宇宙船を強力な磁場で包むことにより、ある程度は避ける事ができた。しかし不測の事態に対応するには強力なエネルギービームで対象を破壊(消滅)させる技術が必要であった。このような目的で開発された装置が、同時に強力な武器となることは誰の目にも明らかであった。

こうして開発されたのが PHASER (PHASed Energy Rectification)である。

フェイザーのキーワードは"Rapid Nadion Effect"(RNE)である。Rapid nadionとは核力に関係した、非常に寿命の短い素粒子のことである【普通はグルーオン (gluon)などを指すものと思われるが、具体的な素粒子の名前は分からない。多分未発見の素粒子だろう】。"Fushigi-no-umi(不思議の海)"と呼ばれる特殊な超伝導結晶体は rapid nadionの力を解放し、フェイザーはこの"Rapid nadion effect"を応用したビームらしい。なお、"Fushigi-no-umi(不思議の海)"は Tokyoの宇宙艦隊科学技術研究所で名付けられたという。

フェイザーは放射装置にエネルギーを注入することによって発生する。入力エネルギーは、電力であってもプラズマであっても良く、特定の種類のエネルギーに変換する必要はない。主砲に用いられる大型のフェイザーはフェイザー・バンクとも呼ばれ、それらを複数直列に連結することによって高エネルギービームを放射する。

通常の動力源はワープエンジンの正反物質反応炉、一部に重水素核融合反応炉である。Enterprise-Dには全部で12門のフェイザー砲がある。円盤部には全方向に打てるように200個の放射器が並んで円形をなしている。円盤部が戦闘部から分離した場合は、ワープエンジンからエネルギーを取れないので、通常エンジンの核融合炉から得る。

一般的にはフェイザーの動力はパワーコンジット(エネルギーを通す管)で長い経路を運ばれてくるのだが、DS9に登場する ディファイアント号 (USS Defiant)には独特の工夫が施してある。ディファイアントの主砲フェイザーは左右のワープエンジンの直前に位置し、左右2門づつで合計4門ある。ワープエンジンに繋がるパワーコンジットがフェイザー発振器に直接接続されており、ワープエンジンに流れるパワーをそのまま利用できる形となっている。しかも何らかの機構によりエネルギー変換効率は従来より30%もアップしているという ("Defiant" [DS9])。発振方式も通常の連続型フェイザーではなくパルス型フェイザーなので、単位時間あたりのエネルギー密度は格段に高い。このような工夫により、船全体のパワーは Enterprise-Dには遠くおよばないが、主砲フェイザーは Enterprise-Dのそれに匹敵する。事実、ディファイアントは、ジェムハダー(ドミニオン)の強力なシールドを破って撃破している ("The Search" [DS9])。
【なお、ディファイアントにはそれ以外に通常のフェイザー砲が後方に4門、上面に8門、下面に6門ある】

フェイザーはその用途から、いくつかに分類されている。
まず携帯用として、ハンド・フェイザーとも呼ばれるタイプ1、携帯用フェイザー銃のタイプ2、そしてフェイザー・ライフルのタイプ3の3種類がある。タイプ2と3では、出力調節が16段階あり、段階ごとにエネルギーは指数関数的に増大する。一般に第1〜3目盛りでは麻痺程度であるが、第7目盛りくらいになると高熱を発生し、殺傷能力がある。それ以上になると気化させることが出来る。タイプ2でも最大にセットすると、ビルを吹き飛ばすほどのパワーを出す ("Frame of Mind" [TNG])。タイプ3はビームの強さはタイプ2と同じであるが、照射時間を長く保てる上にエネルギーの再充填が早く、照準の安定も良い。さらには16種類ものビームのモードが選択可能となっている ("Return to Grace" [DS9])。

宇宙船に搭載されるものとしては、シャトル用のタイプ4、巡洋艦クラス用のタイプ6などがあり、Enterprise-Dに搭載されているのはタイプ10である。Enterprise-Eにはタイプ10plus(一説にはタイプ12)が搭載されており、宇宙艦隊が保有する砲座としては最大級の破壊力を持つ。

フェイザーは、出力と焦点調節の組み合わせで様々な用途に用いることが出来る。武器として使用する場合にはビームの焦点を絞って使用し、麻痺モードから気化モードまで調節可能。ビームを拡散すればエネルギー密度は低くなるが、広い範囲を照射出来るので、例えば岩石を溶岩に変えることも出来る。またビームを収束させれば、高性能の外科用レーザーメスの様に使うことも出来る ("Galaxy's Child" [TNG])。

このビームは破壊力は強いが、シールドで拡散されてしまうので、フェイザーは艦対艦の砲撃戦では決定打とはなりにくい。通常の戦闘ではフェイザーで相手のシールドを弱らせておいて、その”穴”に光子魚雷を打ち込む、という手法がとられることが多い。

通常、照準システムは標的にガイドビームを発射しながら、今までの戦闘パターンのデータベースをもとに標的の動きを予測する。しかしたとえ弱いビームであっても相手に当たれば照準ロックした事が知れてしまうので、戦闘能力に余裕の無い場合は手動で砲撃することもある ("Redemption" [TNG] etc.)。

なお、フェイザーは光速で伝播するビームなので、ワープ飛行中は使用しても効果はうすく、通常は亜光速以下で使用する。しかしワープ中であっても、至近距離でかつ両者が正確に同じワープ速度であれば、ある程度の効果はあるようだ ("Message in a Bottle" [VGR])。

余談であるが、携帯用フェイザーでも大変な破壊力を出せる秘密は、突き詰めるとその内蔵バッテリーにある。TOSでは、バッテリーをショートさせてフェイザー銃を爆薬代わりに用いる手法が何度も出てきたし、TNGでは動力供給の止められた転送装置をタイプ1フェイザー銃のバッテリーを使って作動させる手法が出てくる。さらには、フェイザーとは直接関係は無いが、ウォーフ大尉は、コミュニケーターピンの米粒のような小さなバッテリーを使い、護身用シールドを15秒も発生させて、ピストルの弾丸を跳ね返している ("A Fistful of Datas"[TNG])。

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