指揮官スポット |
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Written by NEW BEN・野呂博之・SeaQuestDSV(連作) |
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「さあ、スポット、これからポーカーに行くから、この席に艦長がいない時はここに来て指揮を採ってごらん。それまではここに隠れているんだよ。」
そう言って操舵席の裏に作った秘密の猫部屋に押し込むアンドロイドがいた。
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スポットは、上級士官全員が任務遂行中により、だれも指揮できない場合の代理少佐に任命されていた。この赤毛のトラ猫はスポットの家族であり、普段はデータの船室にいたが、データの指揮を執っている時間において、データがブリッジを離れた場合の代理として、指揮することになっている。データが用意した秘密の猫部屋と、データの自室は専用通路(通称キャットウォーク)で結ばれていた。
「少佐。センサーが前方に異常な現象をとらえています」
指令席で丸くなって寝ていたスポット少佐は、席の後ろで大声で叫ぶ大尉の声で目を覚ました。驚いた顔で大尉を見つめたが、しかしすぐに毛繕いを始めた。
「了解。フルスキャンを開始します」戦術士官はさっそく作業を開始した。
後方の科学ステーションで作業していた新米の少尉は、驚いた顔をして大尉に質問した。
「大尉。あの猫は、・・・いえスポット少佐は、何とおっしゃたのですか?」
「君はエンタープライズに配属されたばかりたっだな。少佐が毛繕いを始めた場合は、ピカード艦長の『Make it so』と同じ意味だ。よく覚えておきたまえ」
「了解しました」
戦術士官はコンソールを操作し、前方に亜空間のゆらぎがあるのに気付いた。するスキャンの結果はボーグのトランスワープチューブと良く似た数値が表示されていた。大尉は背筋が寒くなった。上級士官が不在のなか、いまにも前方にボーグが出現するかもしれない。思わず叫んでいた。
「少佐!。ボーグのトランスワープチューブの可能性があります」。
その声を聞いたスポットは総毛逆立った。大尉の叫び声に敵対心を抱いたのだ。
「了解。非常態勢。総員戦闘配置。シールド出力最大、フェーザー発射準備、光子魚雷装填」
艦内に非常警報のサイレンが鳴り響いた。各通路には赤いラインが点滅している。全クルーは非番のものも、それぞれの持ち場に向かって急いでいる。またクルーの家族は各自室に戻って事態の収束することを願った。
そのころピカード艦長はライカーの部屋でポーカーに興じていた。予想以上にピカード艦長は上手で、いつものライカーのポーカーフェースも崩れかけていた。「こうみえても昔はギャンブラーと言われていた」というのはまんざら嘘ではないようだ。そこに突然非常警報のサイレンが鳴り響いた。
「ピカードよりブリッジ」。艦長は反射的にブリッジを呼び出していた。
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ブリッジには、スポット少佐が座っており、ピカードの呼びかけに喉を鳴らした。
ピカードはとっさに最悪の事態を想定した。スポットが喉を鳴らすのは、データ少佐とたわむれている時か、危険が迫っている時だけだ。データは、ここでライカーがイカサマをしないか見張っている。残る選択肢は。。。ピカードのおでこからは冷や汗がでていた。「ライカー。ブリッジへ行くぞ。勝負はお預けだ。」
ライカーは、"助かった"という表情をしていた。
ブリッジ。ピカード一行が到着。データは、超人的な速さで艦長席に座っていたスポットを抱き上げた。
「報告!」大尉が状況を報告する。データはオプスについた。スポットに、「部屋に戻ってなさい。」といい、専用通路に押し込んだ。スポットは、行きたくない様子だ。そこへ、ちょうどいいところにウェスリーが来た。彼は、休暇の合間をぬって、このエンタープライズに帰ってきていた。
「ウェスリー。すまないが、スポットを連れていってくれないか。」 「わかったよ。」とウェスリー。 操舵席にはオブライエンが座っている。戦闘配備は整った。
しかし、ブリッジに突如まばゆい光が現れた。Qだ。
「久しぶりだな。ピカード。」
「今はそれどころじゃないのに。」と思うデータを除くブリッジ士官全員。Qは続ける。「いや〜。艦長、大変そうだな。」
「また、ボーグに引き合わせるつもりか!」と心の中で怒るピカード。「さて、君は、私がまたボーグに引き合わせようとしていると思っとるようだが。。。本当に現れるのがボーグだと思うか?」と、言ったところで、突然Qは足元の奇妙な感触に襲われ、震え上がった。ライカーはQの足元を見た。
すると、Qの足にはスポットが体をすりよせていた。データも金色の目を丸くして見ていた。そして、口を開いた。
「スポットは、人なつっこいんだ。しかし、人じゃないものにもなつくとは、実に魅惑的だ。」ライカーはにやにや笑っている。
Qの猫に対する反応に気付いたようだ。「Q。おまえさん、猫が苦手なんじゃないのか?」といわれ、Qはあわてる。
「そ、そんな事はない。私がこのような下等動物1匹に恐れているだと?はは。冗談はよしてくれ、ライカー。私はQだ。全能なのだぞ?」
「全能でも、苦手な物はあるだろう?」とライカー。「そりゃ、エル=オーリア人は苦手だが。。。とくにガイナンとか言ったか?あの女はどうも、苦手だ。」Qは、以前ガイナンに手を刺されたことを思い出していた。
「だが、猫も苦手だ。特に足にすりよってこられると。。。なあ?データ。」 「明白ですな。」とデータ。
「そんな事はどうでもいいだろう!ウェスリー、早くこの下等動物をアンドロイドの部屋に持っていってくれ。」
「わかったよ。かわいいのに。。。そうかぁ、Qは猫が苦手なのかぁ。」と笑みを浮かべながらブリッジを去っていくウェスリー。
助かったといわんばかりの安堵の表情をもらしたQだが、すぐに顔を元に戻した。だが、ピカードとライカーには悟られたようだ。「さて、私がここに来たのはわかっているな?君たち地球人に私から贈り物だ。」
とQが言うと、トランスワープチューブが開いた。
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そこにあらわれたのは、正体不明の宇宙船であった。
と突然ピカード艦長ら主立った士官が転送でさらわれてしまった。スポット少佐を除くブリッジ士官がいなくなり、ウォーフは驚愕した。
ブリッジの主立った士官がさらわれたという事になると、敵は明らかにこちらの状況を掌握している。
「ピカード艦長を呼びだせ!」
ウォーフが叫んだ。通信士がパネルを操作する。
「応答がありません。」
一体どうしたというのだ。ウォーフは戸惑った。やはりここは、信頼のおけるスポット少佐に指揮を執ってもらうしかない。秘密の部屋からキャットウォークに向かい、かがみ込むと声をかけた。
「スポット少佐!至急ブリッジまでお願いします!」
しばらく待ったがスポットが来ない。ウォーフは焦りを感じたが、ふとデータに教わった「緊急用またたび」というアイテムがある事を思い出し、それを取りに行った。
通信士の呼びかけにようやくピカードからの返答があった。
”こちらピカードだ。現在状況がはっきりしないがこちらの位置はつかめるか?”
「確認できます。ですが特殊な妨害波で転送は出来そうも有りません。」
”いま相手の出方をうかがっている所だ、ロックだけしておいてくれ。”
ウォーフが「緊急用またたび」をセットするとじっくりとスポット少佐の登橋を待った。
ピカード艦長はポーカー仲間と異星人とでポーカーに興じていた。
異星人とデータ少佐とライカー副長、それに、ピカードはお互いに掛け金が釣り上がっている。他のメンバーは既にドロップを宣言していた。ピカード艦長は不気味な笑みを浮かべながら賭けチップを差し出す。
「さらに10上乗せしよう。」
データは、継続策にでた。
「その10に対して、1上乗せします。」
そこで異星人は冷や汗をかきながら、賭けチップを差し出した。
「・・・・コ、コールだ!」
ライカーのハンドはスリーカードだが、ワイルドカードはない。今までは艦長のはったりと読んでいたが、確率的にそろそろ高い手が出そうだ。異星人も自分と同等だろうと踏んで、この勝負はピカードにやられたなと思い、ドロップする。
「今回は降りよう。」
とそこにエンタープライズからの通信が入った。
「こちらピカードだ。現在状況がはっきりしないがこちらの位置はつかめるか?」
転送が出来ないとの事であったが、好都合である。今良い所だ。これからが本番である。
「いま相手の出方をうかがっている所だ、ロックだけしておいてくれ。」
ピカード艦長は通信を切った。
「では、さらに、20上乗せしようか。」
とチップを差し出すと確率を計算したデータが降りた。異星人は冷や汗を更に吹きだし、考えた挙げ句カードを伏せた。
「降りる。一体どんな手だったのだ?・・・」
ピカードが聞いた。
「見たいか?」
そういってピカードが手を見せると、ライカー副長とデータ少佐は驚き、異星人は逆上した。
「な、なんだ、ノーハンドでここまで吊り上げるのか?」
「わたしの勝ちのようだ。約束どおり帰してもらおうか。」
異星人はそうはさせじと叫んだ。
「いや、帰さぬ、こうなったら勝つまでやるぞ、帰る先は吹き飛ばしてやる!」
そういって運転席に座りパネルを操作すると魚雷が発射された。
エンタープライズのブリッジに秘密の部屋からスポット少佐が勢い良く飛び出してきた。しばらくブリッジ内を走り回っていたが、本物のまたたびがない事に気がつくと疲れたのか艦長席に座り込む。ウォーフは安堵して報告をする。
「現在敵艦とはこの距離を保っております。ピカード艦長はあそこに捕らえられています。」
とそこに突然、エンタープライズは敵艦からの攻撃を受けた。
「シールドダウン30%!生命維持装置にトラブル発生、予備に切り替えます。」
艦内の気温が上昇してきた。スポット少佐は前足をなめては顔をこするしぐさを繰り返した。
「し、しかし少佐!」
ウォーフは撤退する事に不満だ。スポット少佐は少々暑くなったので首を椅子にもたげて舌をだした。
「ご、ご命令とあらば!ワープ6で離脱します!」
ウォーフが指示を出すと操舵士がセッティングされている座標を見て驚いた。
「これでは、あの敵艦にぶつかってしまいます。」
セッティングは前回のワープ時のままである。
「艦長には何かお考えがあるのだ。そうか!分かった。フェイザー砲と転送の準備はよいな、合図があったら転送と同時にフェイザー砲を発射する。そしてまた離脱だ。そうですね!スポット少佐!」
毛繕いをするにはこの席は丁度良い。新米の戦術士官が喜んで2度3度うなずいた。操舵士がパネルを操作するとエンタープライズは敵艦のすぐ目の前にワープした。
”ここなら転送できます!”
転送ルームから応答が来た。目の前には敵艦が迫っている。戦術士官が叫ぶ。
「このままでは衝突します!」
ウォーフが叫ぶ。
「スポット少佐!」
操舵士が叫ぶ。
「距離200!」
敵艦がぐんぐん迫ってくる。スポットは回りの騒々しさにうっとうしくなり、声を発した。
「ナーウゥ(nooow)」
合図(?)とともに艦長ら一行が転送され、フェイザー砲を目の前の敵艦めがけて発射したかと思うと直ちにエンタープライズはワープに入り、難を逃れた。
この、スポット少佐の見事な指揮は後に「スポット戦術」として艦隊アカデミーの教科書に載る事となる。
つづく・・・・かな?−−−−−−誰かフォローしてぇ〜(^-^;)(^-^;)(^-^;)
☆ポーカーについての知識
ポーカーは5枚のカードの組み合わせにより手札の強弱が定められています。これをハンドといいます。ただし、一部または全部のカードは相手には伏せてあり、その状態で自分の方が勝つだろうと見込んで掛け金を出します。
相手が同意して同じ金額にそろえる事をコールといいます。自分が負けるかもしれないから勝負を止める場合は今までの掛け金はそのまま供出として、ドロップ(降りる)する事が出来ます。ドロップするとどんなに強いハンドを持っていても、勝負に参加する権利は無くなります。
また、相手の掛け金よりも多く上乗せして掛け金をつり上げる事が出来ます。その場合最初にかけた人は、コールするか、更に上乗せするか、また、ドロップするかを選択しなければいけません。最終的に全員がコールまたはドロップした時に、手の内のカードをオープンして一番強い手役を持っていた人がその場の掛け金全部を手にする事が出来ます。
ですから、相手より弱いハンドでも、相手が恐れて降りてくれればその勝負には勝てることになります。