バッシュとQの楽しい探検 | |
アルファンの秘宝 STAR TREK The Next Generation |
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Written by NEW BEN |
Qってば、一緒に行くって言ってここまで連れてきてくれたのは良いけれど、あれから、1週間も音沙汰なし。何やってんのかしら。
一応次の星系には向かっている(つもり)なんだけど、シャトルに一人だもんね、退屈だなぁ。
・・・ジャン・リュックかぁ。連邦の士官じゃなかったら良かったのにな。彼とも考古学ではいろいろおはなしができるんだけれども、ちょっと私とは違うのよねぇ。フィーリングっていうか、なんていうか。
そう言えば、ライサでのボルゴンの宝はがっかりだったわぁ、もうちょっとマシなネタはなかったものかしらねぇ。こちらの宇宙域(Qがデルタ宇宙域といってたけど)には謎が多くて、探査機がいくつか送られているんだけれども、アルファー、ベータ宇宙域の謎を解く鍵があるとも言われているの。そんな興味もあってQに付いてきたんだけどとんでもない所まで着ちゃったのよねぇ、やっぱり、やめた方が良かったかも・・・
謎といえば、イッシアの「ハメドの扉」なんて何か手がかりでもほしいな。ジブトールの「シュヌボスの目」も捨て難いわ。んん、モレゴンの宝石もいいけど、あの、フィレンギとかいう種族にはしばらくあいたくないわね。利用できる奴なんだけれど。まあ、デルタ宇宙域には奴等もいないでしょうけれどね。
さって、どうしたものかなぁ。こんな所じゃ次の星に必ずしも期待できるわけでもないし・・・・
「期待出来る面白い所に行こうじゃあないか。あん?」
ん!?だれ?その声は?ふりむいても誰もいない。でも私を見ているような気がする。
「この上ない上品なお宝の待つワイボーンスに行こうじゃないか。」
私しかいない宇宙船に突然乗り込んでこれるやつといえば・・・・
「Qね!?いったいどういうつもり?・・・」
景色がシャトル内部から、白い岩のようなこぶが延々と広がっているものになった。ここはなんなの一体!? 私のシャトルはどうしちゃったの?
「どうだい、素敵な所だろう?」
後ろから声がした、ひとりの男がいる。地球古代の海洋盗賊団の服装をしている。Qよ。
「ちょっと、ここはどこ?ぜんぜん面白くも素敵でもないわよ!」
両手を広げて見せた。
「おやあ、そうかい。じゃあ、こういうのがお好みかな。」
あたりの景色がまた一変した。一人の仰々しい男がこれまた仰々しくお辞儀をしてくる。これまた地球の古代のヨーロッパ風の服を着ている。
「ジャン・リュック!?」
「は?なんと?そのようなものはここにはおりません。アントワネット様。」
しばし呆然とした。私といえばそれはまた仰々しい窮屈な服装で、宝石やら何やら身に纏い、立派な椅子に腰掛けている。ちょっとまってよ、どういうことよ。またあの時の悪戯ね、もうあれは勘弁だわ。
「ねぇねぇ、こんな遊びはもういいのよ。」
反応がない。少し不安になった。
「Q、悪戯はやめてちょうだい!」
Qが傍らに現れた。中世フランスの騎士風の格好をしている。貴方そういうの好み?
「おおや、それはないだろう、バッシュぅ。結末はとても面白いぞぉ?」
Qはわたしを睨み付けじりじりと顔を近づけて言った。わたしだって目をそらさないわよ。
「ねぇ、Q。やめてよ、趣味じゃないわ、こんな安っぽい御芝居なんかしたくもないわ、元に戻してちょうだい。」
なんともとぼけた口調でQが言う。
「おんや、そうなのぉ、じゃあしょうがないねぇ、フイッ・・・。」
元のコブだらけに戻った。あったまくんなぁ、Q!?、ジャンリュックが渋い顔をしていた理由がなんとなく分ったような気がするわ。
「しばらく楽しむがよい。」
そうQが言うと、冷たい風だけがわたしを襲った。にくったらしいなぁ、もう。
「何よ、また一人にして、どこへいっちゃうのよ!」
−−−ちょっと野暮用があってね、まあ、すぐ戻るさ・・・・
頭に来て、こぶを蹴飛ばしてみた。ぼろりと崩れると中から緑の発光体がある。あら、これ・・・ 「まさか、「ティルグナールグ」の原石・・・それにしては柔らかいわ。」
アルファンの古代遺蹟にあったとされる宝石で、発掘時には壁画としてしか見たことがなかったもの。
ちょっとすごいじゃない、デルタ宇宙域への無人探査船が奇跡的に回収された時に数個発見され、その存在が確認されたというものよ。そして、その耐性、光沢は群を抜く。アルファンは主に工業が発達していたらしい。
これ、じゃあ、こっちも?・・・こっちも?ああ、そうだ、そうだ。こっちも蹴飛ばしてみよう。こんなにある。いいわね、これ。懐に仕舞っちゃおう。ん?ちょっとまてよ。どうやって帰ればいいの?でもって、このこぶだらけは、一体どこまで続いているの?溜息を漏らさずにはいられないわね。がっかり。
「ふうう・・・」
夜。空は星が瞬いている。大分歩いたけれど、このコブはずうっと続くみたい。なあんか遣る瀬無い。
なにか光るものが空を飛んできた。うんうんうなっている。だんだん大きくなる。ちょっと、私に向ってくるじゃない!?
なにがおこっているの?光がわたしをつつむ。わ、わ、わ。
「きゃあ・・・」
☆ ☆ ☆
しばらく眠ったのかしら。私の回りにはフィールドが張られているらしい。ちょっと触ってみた。バリバリっと大きな音がした。
やれやれ、捕まった。洞窟かしら。フィールドの回りはごつごつした岩。原石はポケットに・・・無いわよねぇ、やっぱり。
「ふうう・・・」
最近溜息ばっかり。誰か近づいてくる。どこの種族かしら。何か言ってる。
「密輸者だ。公開処刑ということだな。」
ええっ!処刑!?マリーアントワネットの方が良かったかしら・・・あ、だめか。
「まて、変わった種族だ。何か利用価値があるかも知れない。」
背格好はやや低いが男のようだ。ただ、顔が薄青っぽく縦に筋がいくつもある。質素な警備服を着ている。ええん、悪気はなかったのよぉ。
「宰相に報告しよう。」ともう一人の男。
しばらくすると先ほどの二人が戻ってきて、手にもつコントローラーでフィールドを解除した。
銃を突き付けられたまま別の部屋に連れて行かれた。先ほどよりも広く普通の部屋ではあったが、出口はフィールドで覆われており、やはり出られない。ベッドは岩かしら。椅子も。なんとも、科学技術とアンマッチね。センス悪いわ。宰相とか言ってたわね。それと思しき人物が従者一人と警備員一人を連れて部屋に入ってきたわ。
「わたしはこの星ワイボーンスの宰相でネエルグと申す。其方は?」
あら、意外と丁寧じゃない。お辞儀までして。
「バッシュよ。ドクター・バッシュ。考古学が専門よ。」
お得意の営業スマイルでご挨拶ときたもんだ。
「何が目的でここに来られたのか。」
「目的も何も、無理矢理連れてこられたのよ。へんなやつにね。」
ああ、思い出したら気分悪いわ。んべー。
「なぜ、エルゲを採ろうとしたのか。」
「エルゲって?」
横にいた従者かな、秘書かな?が答えた。
「あの緑色の塊の事だ。」
ティルグナールグの原石のことか、う、それを言われると、ちょっと。
「そ、それはね、考古学的に価値のあるものなのよ。それは。」
うふふ。と愛想笑い。彼らはどういう事かわからいようで宰相と従者が顔を見合わせている。話しが通じていないみたいな雰囲気。後ろを向いて何やら話し合いをはじめた。「ダール」がどうとか聞こえたわ。宰相がこちらを振り向いてまた落ち着いた物腰で話し掛けてきた。
「近隣の惑星のものではないようだが、どちらからおいでなさったのだ?」
「テランよ。滅多に帰らないけれど。」
しばし考えたようだった。
「聞いた事の無い星だ。エリーグよ、悪気があったようではない。しばらくここに置かせてあげよう。」
そぉそぉ、悪気はないのよ。宰相が隣りの従者(にしておこう)に言うと、わたしに言った。
「無理矢理連れられたとおっしゃっておられましたな。この星は何も無い所。帰る方法もそうはござらぬ。」
「シャトルか宇宙船はないの?借りるだけで良いわ。」
「残念だが、この星から出る事は難しい。なんとか取り計らってみるが、何時になるかは保証できない。しばらくここに住まわれるとよい。何か必要なものがあったら、こちらのエリーグに申し渡すがよい。」
「どうーも。」
何も無いって、ティルグナールグの原石があるじゃない。見渡す限りの。
こんな感じで妙な事になったけれど、いろいろ複雑な事情があったらしいのよ。
「『ダール』って、何?」
「最近治安が乱れておりましてな。まあ、不穏な動きがあちこちで見受けられるのです。」
内情はいろいろあるらしいのよね。まあ、わたしには関係無いけれど。
「あの畑の方には足を踏み入れないで欲しい、最近頻繁に盗みが横行している。」
あら、畑だったの。ティルグナールグの原石って耕して出来るものだったのね。大発見!
「分ったわ。」
はい、営業スマイル。でも、チャンスがあれば・・・
それでそのあと、しばらく宮城、といっても然して飾りも無く岩の塊に穴を開けただけのような建物だったけれど、そこを、散歩してゆったり流れる空の流れ星を見ていたの。いま思えばあれは、宇宙船だったと思うわ。
☆ ☆ ☆
宰相はわたしと別れてから執務室に行ってセクションの報告をうけていた。
「予定通り130のコンテナを用意できました。」
「よし、通信回路を開いてくれ。」
「了解。」
宰相は部屋の横にある通信ボードにむかい。一人の男と会話を交わす。
”回収準備はよいか。”
「はい、いつもの場所に予定通り130用意いたしました。」
”了解した。次回の搬送では150を用意するように。”
「は、しかし、少しそれでは限界を超えてしまいますが。」
”シベルメ達とキールはいつもより多く渡そう。”
「ではなんとかそのように致しますが、こちらもあまり余裕がありません。もう少し期間を長くしてもらえないと・・・」
”考えておこう”
宰相は通信を終えると。部屋の外にいるエリーグに声をかけた。
「エリーグ。クウンルグを呼んできてくれぬか。」
エリーグは返事をするとすばやく去っていき、クウンルグが部屋に入り一礼した。
「健康な若者はどれほどいるか。」
クウンルグが答える。
「現在、260万ほどにございます。」
「シベルメを300万もらう事になった。40万の不足をどう補えるのか。」
「頑健なものに少々無理をしてもらうか、対象年齢を調整するしかありません。」
宰相は考え込んだ。
☆ ☆ ☆
ここではどんな食事が出るのかしら。植物は豊富なようだけれど。なんてことを考えながら部屋に戻ると、隣りの部屋は鍵がかけられている。入り口の窓は鉄格子になってる。フィールドを張ってみたり訳の判らんところだわ。何があるのかしら、のぞいてみよう。
「きゃあ!」
むこうから顔が覗いていた。
「誰だ!なにものだ。そうか、昨日連れてこられた奴だな。」
びっくりさせないでよ、もう。
「あなた、誰?そこで何をしているの?」
「わたしはホールグという。宰相ネエルグの弟だ。」
まぁ良い所のお方じゃないの。それに端正な顔立ちにワイルドな所もあって素敵かも。
「あらまた、どうしてそんな所に閉じ込められているの?」
端正でワイルドな彼は、ここの宰相の取った政策に不満で叛乱を企てたとして捉えられている事を話してくれた。
「わたしは断じて、ウォレイとは戦うべきだと主張した。しかし兄は聞き入れなかった、
兄は恐れていたのだ。わたしに賛同してくれたものも多くいた。しかし大半はあきらめて兄に従う事にした。中には反対を貫いたものもいたが、ほとんどが皆エルゲとされてしまった。」
エルゲねぇ。エルゲ・・・え!?エルゲって私の懐に入れたあの・・・血の気が引いていくのを憶えた。しばらく言葉にならなかった。
「エルゲを見たのか?わたしは宰相の弟という事で、エルゲにされることなくここに幽閉される事になったのだが・・・」
わたしは背中に氷を入れられたような気がした。早く逃げ出したいよぅ。
「ねぇ、この星から脱出する方法はない?どうも、ここには住みたくない気分なのよ。」
「そうか、今はあまり住みたいと思わないのも無理はないな。むう、何とかなるかもしれない。ここから出してくれるか!?」
「え?そうねぇ。しばらく待っていて。」
そういってあたりを見回しながら、この扉を開けるものはないかと探してみた。
「突き当たりを右に行って少し行くと武器庫が左手にある。見張りはいないと思うが。」
そう後ろから声がかかり、その通りに行ってみた。誰もいないなんて手薄なのねぇ、人手不足かしら。おっと、だれか中に一人いるではないか。そおっとのぞいてみると見張り役らしかった。どうしよう。すっとぼけてみようか。
「ハイ!こんにちは。」
手のひらを、ひらひらひら。
「何だ?」
「ホールグがねぇ、いなくなったようよ。」
「な、なんだと!?」
さあさあ、急がないとまずいわよ。ほれ、行った行った。彼を見送ると武器庫から適当なライフル銃2丁を担いで先ほどの角でまちぶせをした。予定通り見張りの男がぶつぶつ言いながら歩いてきた。タイミングをみはからって。頭をこの銃で・・・ゴチン!倒れた・・・わよね・・・。それ、今のうちにっ。
ホールグの居る部屋の入り口の扉を銃で壊し、一緒に外に駆けて出た。敷地を横断して小高い丘を超えると宇宙船へのカーゴ転送ポートがあるという事らしい。敷地の外には例のこぶの山が連なっている、さっきまで宝の山にみえたそれは、墓標であるかのようであった。墓地への入り口に見張りがいた。ホールグはためらうことなく銃を撃った。見張り役はその場に倒れた。
小高い丘に向う途中、畑と呼ばれる墓地(よねぇやっぱり)を横切ったが、あの緑の輝きをもう一度みたいとは思わなかった(そのときはね)。
丘の頂上に着くと、身体を伏せながらその転送ポートへと向った。十メートル立方位のコンテナーが7〜8基置いてある。ホールグは転送コントロールパネルに向い操作を始めた。
「・・・これで大丈夫だ。次の回収は明朝8時。その時に一緒に転送される様にしたから、カーゴの中にでも入っていると良い。」
「ありがとう、ホールグ。感謝するわ。お礼がしたいけど・・・」
「いや、出してくれただけで十分だ。これからダールの仲間を探す。必ずこの状況を打破して見せる。」
おお、かっこいいんだわ。ちょっと影のある雰囲気だけど、そこがまた良いのよね。おっと、それどころではない。見張りに見つかったら大変だ。
「じゃ。」
端正でワイルドな彼はそう言うと少し後ずさりしておもむろに振り返り、丘の頂上を越えて闇へと消えていった。私ってば男運はちょっと悪いのかもね。
☆ ☆ ☆
カーゴの中は暗く、とても居心地のよいものではなかった。闇の中の闇。あーあ、退屈だなぁ。と思うとふっと明るくなった。
「ちょっと暗いようだね。」
振り向くと松明を掲げたQが立っている。その古代のヨーロッパスタイル好きねぇあなた。いまさら何しにあらわれたの?
「おお、この荷物はすごいお土産だな。なかなかやるじゃないか。」
「何いってんのよ、今ごろ現れて。わたしはこの星から抜け出したいだけ。こんな荷物に用はないわ。」
「おやおや、この荷物の中身を知らないのかい。」
あ、もうだめ、嫌な予感。
「荷物はアルファンに運ばれる・・・。そこで、秘蔵のお宝に変身してウォレイに持ち込まれるという訳だ。」
あーやっぱり。もうげんなりよ。彼らにとっての死骸がウォレイでは宝になるなんてなんてこと。
「はっはっはぁ、その星もまた楽しめるぞぉ。こりゃまたまさしく珍品逸品のオンパレードだぁ。」
「ちょっとぉ、アルファンには遺蹟はあるけれど、それほどお宝はオンパレードじゃないわよ。」
「この世の中は3次元だけではないのだよ。じゃあ次のアルファンで会おうじゃないか・・・・・・」
「あ、あ、ままま・・・」
まってよ、そこで消えないでよ。ほら、その、ピカッて光ってシュッと飛んでゆく能力、貸してよ、ね、ね、せめて松明ぐらい・・・・はあ、長いカーゴ生活をどうしてくれるのかしら。ああん、お腹すいたわぁ。
−−−そいつはまだ柔らかいから食用になるぞ・・・
うげ!
− 「アルファンの秘宝」 終わり −