All Good Things... について
(by Mr. Nishi)
25年後の世界のデータ少佐は、反時間の亀裂は3つの時象線において同じ座標に向けて逆タキオンビームを照射した事によって発生したと断定した。それでは何故、まだビームを使用していない現在と過去で亀裂が起きていたのだろうか?
これは時空理論(Temporal Theories, 以下TT)の視点から理解してみたい。TTの基本概念の中でも最も不可解なものとして「原因と結果の逆転」という現象がある。普通に考えれば結果は必ず原因の後に来るもはずであるが、TTではそれが逆転する事がある、とされている ("Parallax" [VGR])。【補足解説 #2を参照】
この説に依ると、亀裂の発生(結果)がビーム使用(原因)よりも先に起きうるのである。なぜこのような現象が起きるのかは定かではないが、恐らくは時空間(Space-Time Continuum)が亀裂などによって歪むと時象線に歪みが生じループを形成 されたのではないだろうか。ループになれば、どちらが先に起きた事象なのか曖昧になる。【"Cause and Effect" [TNG]でEnterprise-Dは時空ループを経験している】
反時間は通常時間の逆に流れるので、未来のイベントが時象線上を逆流して来たと考えることもできるかもしれないけれども、このエピソードにおいては3つの時間帯でそれぞれの時象線が独立しているので、もしそうであれば反時間が時象線間を移動できるということになってしまう。
それではなぜ事なる時象線上で同じ現象が目撃できたのか?
ここで、これらの事なる時象線それぞれを平行宇宙 (Parallel Universe)に置き換えてみる。
我々があるシチュエーションに遭遇した時、将棋の指し手と同様、そこには無数の行動選択枝が存在する。データ少佐によれば、これらの行動は全て平行宇宙で実行されるという。よって私たちの宇宙と平行している宇宙が無限に存在し、その数はネズミ算式に増え続けている。ある種の時空間の歪みはこれらの平行宇宙を繋げることもある。【"Parallels" [TNG]では、「様々な歴史」を辿った無数の Enterprise-Dが時空の歪みによって狭い宙域に一同に集合してしまった】
3つの時間の世界はそれぞれが異なる歴史を持つ平行宇宙での出来事である。しかるに時空亀裂に関しては全く同じ現象が観測された。このエピソードでは3つの時間が "Parallels" [TNG]のように、同じ場所に集合したのではないので平行宇宙が直接繋がったのではないが、この「反時間」による時空間の歪みが異なる平行宇宙(それぞれが異なる時象線を持つ)を(部分的に)繋げ、結果としてそれぞれの平行宇宙で同じ現象を目撃できたのではないか、と考えられる。またピカード艦長が経験した平行宇宙はQの意思によって選ばれたものであるので、かなりの互換性を持った都合の良いものであったであろう事は想像に難くない。
補足解説
西氏は "All Good Things..." [TNG]における因果律の乱れを、TNGとVGRのエピソードを基に解釈している。彼の結論は、私の解釈とは全く異なる視点から導き出されている。
氏の解釈は、原因と結果が反転するかもしれないという、いわば「因果律の破れ」というものが特殊な条件下では起こりうるという予想、そして平行宇宙がお互いに直接接触することが無くとも、反時間が宇宙という「団子」を「串」のように貫いて「部分的な歴史の共有」をもたらす可能性を示唆したものである。
補足解説 #2
「原因と結果の逆転」について--- ("Parallax" [VGR])
USS Voyagerが Warp6で航行中に緊急信号を受信、調査のために亜光速に速度を落としたところブラックホールの重力場に囚われた船を発見した。いろいろと救助を試みるも全て失敗、近所の星の方々に助けを頼もうとブラックホールを離れたところ、なぜかまた同じ所へ戻って来てしまう。
調査の結果、信号の発信源である船は実はボイジャーそのもので、最初にワープから離脱した時点ですでにブラックホールの重力場にはまっていた(!)、ということが判明した。
この矛盾は、信号発信源のボイジャーはブラックホールの歪みによって「反射」された未来の姿である、という説明がなされており、さらに受信した緊急信号はワープから離脱した際にボイジャーが発信した信号 (Opening Hail)なのであった。
ただの「反射」ということであれば物理的には存在しないことになるが、反射から発信された信号を受信できたこと、反射をスキャンしたところちゃんとデータが帰ってきた事、などからこの反射は物理的に存在する特殊な反射であると思われる。
さらに、ストーリー後半では未来ではなく過去が反射されていたので、ブラックホールにより時空間が極度に歪められ、「異なる時間が同じ空間に存在する」という現象が認められたのであろう。
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