All Good Things... について最終エピソード、"All Good Things..." [TNG]は、数あるTNGのエピソードの中でも別格の内容で、大変印象に残る名作である。しかし内容は非常に難解で、良く考えると矛盾点が出てくる。この矛盾点をそのまま「放置」すれば、このエピソードの輝きが失われるのでは、と思い理論武装を試みた。以下の解説はまったくの私見(こじつけ?)なので、ただの意見として読んで頂きたい。(もっとも、全てをQの設定したゲームとみる事もできる) このエピソードでは、ピカード艦長はQの悪戯で7年前、現在(2370年)、25年後、40億年前(地球)の異なる時間に引きずり回されている。そして彼が得た知見から推察すると、Devron星系で発見された時空の亀裂 (temporal rift)は過去に向かうほど大きくなり、24世紀の時点で修復しなければ「宇宙の歴史」が大きく変わり、少なくとも生命は発生しなくなってしまうらしいのだ。現在より7年前、7年前より40億年前と、亀裂は大きくなっていたのである。亀裂の向こうは「反時間 (anti-time)」が流れているので、逆の時間ベクトルが亀裂から漏れてくるのである。 そこで艦長は25年後の Devron星系に赴き、時空の亀裂を阻止すべく逆タキオンビーム (inverse tachyon beam)を亀裂の座標に照射するのだが、ここがおかしい。過去に行くほど亀裂が大きいのであれば、ビームを照射する時に既に亀裂が存在しなければならないのだ。でも亀裂は無かったのであった。 しかし我々は、事象線 (time line)が5年前、現在、25年後などで全て異なる事に注意しなければならない。すなわち、艦長が見た事象には連続性が無いのだ。その証拠に、25年後のEnterprise-Dはワープエンジン (warp nacelle)が3つある。ブリッジのデザインもフェイザー砲も異なる。また、7年前の着任当初、非常警報を出したことは無かった。みな別の時空で起こった出来事である。 それでは25年後の Devron星系に艦長が到着したときに時空亀裂が無かったのは何故か? 実はビームを発射する前と後で、事象線が交差しているのである。ビームの発射を指示したのは艦長自身であり、そこには彼の「自由意志」があるのだ。艦長はビーム発射をやめる事も出来たのである。結果的には、もしもビーム発射をやめていれば亀裂は発生しなかったのである。発射した瞬間に事象線を乗り換えたと考えられる。 疑問点はもう一つある。25年後の Devron星系でビームを発射した後 Enterprise-Dは星系を離れたが、思い直して数時間後に発射地点に帰ってくる。このとき亀裂が存在した。これもおかしい。ビーム発射よりも未来には亀裂は存在しないはずである。ビーム発射後は特に何もしていないので、再び事象線を越える事は無いはずだ。 ここは最も解釈が困難なところであるが、恐らく次のような事であろうと想像している。 25年後のビームを発射した時点から亀裂が発生した。このときはビッグバンやブラックホール理論でいう「特異点」が存在したとも考えられる。時空の捻れが理論上無限大で、大きさはゼロ(プランク長以下)の状態だったのではないだろうか。このような状態のため量子論的効果がはたらいて、「時間軸上で不確定性が認められた」と考えられる。座標はほぼ正確に測定してビームを発射しているのだから、時間軸方向に『存在が拡散』したのであろう。すなわち、時間と空間で量子論でいう相補性がはたらいたのである。そのために数時間後にも亀裂が認められた。 この不確定性の助けが無ければ、ビームを放った瞬間に Enterprise-Dはもちろん、全宇宙のあらゆる生命体は消滅したはずであった。この現象のおかげで、艦長とクルー達にはワープシェル(亜空間バリアー)を用いて亀裂の修復をする「時間的余裕」が与えられたのだろう。 かくして、時空の修復後は7年前、現在、25年後の何れの時間も消滅し、「新たな現在」がスタートした。 補足解説 Back |