VIVA!ぱられるわーるど
TIME ATTACK
STAR TREK Next Generation
Written by NEW BEN、野呂博之、ベイチョウ

 − TROUBLE −

『艦長日誌補足。引き続き、USS−HOKKAIDOから行方不明となったデータ少佐とラフォージ少佐の捜索中。機関部の報告ではクロニトン分子の影響により転送ビームが曲げられたと予測される。目下原因を調べている。艦隊本部にも事態の解析を依頼したところだ。』
 ピカード艦長は日誌にそう記録すると作戦室の窓からの風景をみた。美しい地球が見える。部下であり、友人でもある二人の男が忽然と消えた・・・。また過去へのタイムスリップしたのかもしれない。以前データは、あるエイリアンを追って19世紀の地球へタイムスリップしてしまった事がある。きっと今回も無事であってほしい。
”ピカード艦長・・・ディファントのシスコ大佐から亜空間通信です。”
 戦術仕官からのアナウンスである。
「了解した。ここで受ける。」
”ピカード艦長。お久しぶりです”
 パネルにベンジャミン・シスコ艦長が現れた。
「やあ、大佐。元気かね。君の活躍ぶりは艦隊本部から良く聞いているよ。私も非常に嬉しい。」
 以前シスコ大佐はステーション司令官として着任するにあたり、ピカード艦長からレクチャー受けた事があった。
”ありがとうございます。エンタープライズのクルーがクロニトン分子により転送中に行方不明になったと聞きました。実は以前われわれも同じ経験をした事があるのです。何かのお役に立てるかも知れないとおもい、直接通信いたしました。”
「ケースライブラリーはチェックしたよ。だが、なにかあるのかね。」
”今、チーフ・オブライエンに代わります。”
 画面がシスコ艦長から、DS9のテクニカル・チーフが映し出された。なつかしい顔、マイルズ・オブライエンである。前のエンタープライズで転送部長をしていた男だ。経験豊かなエンジニアでピカードの誇れる部下の一人である。
”艦長。お久しぶりです。早速ですがわれわれの詳細なデータを送ります。もし状況が同じならこれで再現して救出チームを派遣できると思います。現在ディファントで地球にむけて航行中です。あと10時間でランデブーできる予定です。”
 ディファントはDS9に所属する船だが、会議のため地球を後にDS9へ帰還する途中だった。

「データ、いったいここは何処なんだ?すごい騒音だ」
 ラフォージとデータは草むらの上にいた。
「私のデータベースによれば、内燃機関の排気音のようだ」
「何だって、内燃機関!?20世紀までの過去の遺物じゃないか。そんな環境に悪いものが何台も動いてるって言うのか、此処はどこだ?今はいったい何時なんだ!?」

 ☆ ☆ ☆ 

「ピカードより転送室。」
 ピカードはブリッジでデファイアントとの通信を終えた。早速対処に取り掛かりたい。
”はい、こちら転送室、ベイチョウです。”
「あぁ、主任、たった今ディファイアントからクロニトン分子について詳細なデータを受け取ったところだ、再現できるか。」
”わかりました、やってみます。・・・艦長、どうやらお二人は20世紀末の北米大陸に転送されたようです。」
「もっと詳しくわからないか?」
”どうやら、カナダ・・・らしいですがこれ以上はもっと詳しく分析しないと。”
「わかった、続けてくれ。」
 そこに、艦隊本部から緊急の連絡が入った。


 − ROUND 8 −

 ラフォージとデータは草むらから起き上がると、歩き出した。
「あちらの方へいってみよう。コンテナのようだ。」
 大きなトラックや車が並び、広い敷地に高速で走り去る車が数台みえた。
「ジョーディ、どうやら此処はレース会場らしい。」
「レースってあの同じ所をぐるぐる回って勝敗を決めるやつか?」
「そうだ、このレースは音から分析して大半の車がV型6気筒ターボエンジンという内燃機関を使用しているから1980年代のF1レースということになるこの型のエンジンが使用されたのはきわめて短い間だった。」
「1980年代!!じゃあ、じゃあ場所は何処だ?シッ・・・誰か来た!」
 ラフォージとデータは素早く大型トレーラーの影にあった段ボールにもぐり込んだ。

「此処はチーム「ダンシングブレーブ」のピット裏よ…。トランスポーターの陰で何をしているの・・・」
 艶やかな若い女性の声に、二人は隠れていた段ボールからはい出した。そこにはその声が良く似合う艶やかな女性が立っていた。ラフォージはしばし呆然とした顔つきで彼女を見た。少々顔に赤みがさした。
「ここがどこかわからないなんて変な人達ね。あなたたちメカニックかしら?見たことのないデザインね。」
「あぁ、いやそのぅ、ちょっと長旅の途中なんでね、本当はサンフランシスコに着く予定だったんだけど、どうも迷ったみたいなんだ、なぁデータ。」
「あぁぁ、そうなんです、お嬢さん、まったく持って右も左もわからない状態でして、その〜」
「データ・・・?変わった名前ねぇ。・・・」
「ん、ああ、愛称なんだ。本名はぁ、ジャン・リュック、ジャン・リュック・ピカードだ。」
「あら、フランスの方?・・・それじゃぁ迷うのも無理ないわね。シスコとここじゃあ大分離れてるわよ・・・。ここはカナダのモントリオール・・・。ノートルダム島にある『ジル・ヴィルヌーヴ・サーキット』よ・・・私はマナミ。チーム・ブレーブでパブリシストをやっているの。あなた達F1見たことある?すぐそこがピットガレージよ・・・。」
 データは興味を示したらしい。
「興味深い。内燃機関といえば、自力で動作するアンドロイドから言えば祖先といえる。」
 データの腕を掴えてジョディは耳元でささやいた。
「おい、ここは20世紀なんだぞ。そんな事より戻る方法を考えなくては。」
「いや、考えた所でフェイザーとトリコーダーではどうすることも出来ない。ここは、F1とやらを見せてもらって、役に立つ道具でも見つけてみるのが得策だと思うが。救出班もそのうちくるだろう。」
 突然ラフォージから異常な音がでた。グゥ〜キュルル

「あら、今度はおなかが空いてるの?ああ、ヒッチハイクでここまで来たんでしょ。ついでに一文無しね・・・。わかったわ、ちょっとついてきて。…」

 マナミはいたづらぽく笑い首を振ってついてくるように促した。何か勘違いされているらしい。ラフォージは、少し赤くなっていた顔を、さらに赤くしてデータの後を付いて行くしかなかった。
「しかし、だいたい、何が楽しくて液体燃料を燃やして同じところをぐるぐる回るんだ?」
 データが追いついてきたラフォージに説明する。
「当時の人々は、こういったレースをすることで自己の攻撃エネルギーを発散させていたのだ。」
「ほお、クリンゴンとロミュランにやってもらいたいよ。」
「・・・・!?クリンゴンもロミュランも自動車レースに興味を持つとは思わないが。」
 データには言葉の意味が良くわからなかったようだ。ラフォージは両手を広げてジョークだよというしぐさをした。

 ピットガレージに入ると、F1マシンが2機、待機してならんでいた。1機は一部が破損しているようだ。
「ひゅう。こりゃすげーや。」
 先ほど高速で走っていたのと似ているが、若干異なり色も違いっていてブルーのマシンである。機械仕掛けであるが、思いのほか精密なメカにジョディが口笛を鳴らした。
「今回ドライバーがテスト走行で怪我をしてしまい予選をキャンセルしなければならないのよ、
貴方運転できる?」
 マナミが冗談っぽくデータに話し掛けた。
「ああ、私はどんなマシンでも瞬時に習得することができる。」
 データはマシンの各部を指差しながら、それぞれのパーツの名称を説明していった。
「へぇくわしいのね。ねぇ、運転できるんならのってみない?今回まともにテスト走行も出来ていないのよ。ボスに頼んでみるわ。そうだ、その前にお腹空いているんでしょう?そこに、メカニック達の夜食のパンがあるから、適当に食べていていいわ。飲み物も持ってくる。」

 ☆ ☆ ☆

 もとよりむちゃくちゃな提案であるが、返事は意外なことに良い返事が来た。
「ボスったら自棄を起していたわ。ドライバー達は、病気で倒れたり、今回の事故で怪我でしょう?しかもテストドライバーは既にデトロイトに行って今さら呼び戻せないし。どこかで優勝でもしない限り来年の契約は駄目だろうって。ふふふ。テストドライバーも今期限りなの、貴方が優秀ならば契約してもいいって。フリー走行は今日までよ。メカニック達もよびもどしたわ。」

 後方からピットクルー達がどやどやと入ってきた。先頭にいたのは恰幅のよい30代の男であった。
「おい、おい、ドライバーが見つかったって?どんな奴なんだい。まあ、テスト走行ができるだけでもありがたいってもんだ。」
 30代の男が、がなりたてていた。
「あら、3人だけ?他の人は?」
「いいんだよ、どうせ予選通過なんて期待しちゃいないさ。おう、おめーか、『じゃんるーきぃ』っつうのは。ほんとに大丈夫か?おい?」
「データとよんでくれ。」
「おう、そっちの方が呼びやすいや。な、データ。こいつを持ち上げて試ねぇ。」
 30代の男は、傍らにいたピットクルー達に2つの後輪タイヤを持ってこさせた。
「片腕でそれぞれしばらく持っていられるかい?」
 30代の男はにやにやしながらデータの前にタイヤを転がした。タイヤといえども1つ10KGは下らない。データはそれを二つまとめて重ね、軽々と左腕にのせてみせた。
「これで、良いかな。?」といいながら、ゆさゆさと軽くゆすった。
 唖然としたのは30代の男と、2人のピットクルーと、マナミである。ラフォージは傍らでにやにやと笑っていた。どこかに投げ飛ばされては敵わないと、あわてて両手を、伏せ伏せとしながら、
「おうおう、もう降ろしていいぜ、おれは、ノウロウと言うんだ。よろしく頼むぜ。」
 タイヤをおろしたデータとノウロウと名乗る男は握手を交わした。

 − PRACTICE −

「データ、聞こえる!?」
 マナミはドライバーとのトランシーバーのテストしていた。
”ああ、聞こえるとも。”
「OK!2周目からタイムを測るわよ。何か気づいた所があったらすぐに言ってちょうだい。」
”了解した。”
 傍からラフォージが声をかける。
「おい、データあんまり無茶をするなよ。」
”んん、全く問題無い。”
 データは握りこぶしに親指を立てるサインを出し、おもむろにガレージからピットロードへとマシンを滑らせていった。ラフォージは、データが何かをやらかすのではないかと少々不安になった。

 データの走行が2周目にはいった。ラフォージはストップウォッチにスイッチを入れるマナミの横でデータのマシンがスタートラインを通過するのを見ていた。
「へぇ、うまく作ってあるんだなぁ、あの船体、じゃ無かった、ええと、シャーシーか、誰がデザインしたんだ?この時代じゃろくなシミュレーションも出来ないだろうに。」
 高速で走り去るマシンが作り出す気流を眺めながらラフォージは言った。
「ニューエィっていう新鋭のマシンデザイナーなの。オーナーは天才だっていっていたけど、どうだか。貴方はメカニックなの?」
「ああ、大きな船のエンジンを面倒見ているよ。」
 ラフォージは笑顔をみせた。

 チーフメカニックのノウロウとマナミはトランシーバを耳に当て、データのマシンがスタートラインを通過するのを待った。傍らでラフォージもやきもきしながら見守っている。
 データのマシンが轟音とともに通過した。マナミは手元のストップウォッチを見た。
「1分28秒4台。初めてにしては良いタイムだわ。」
「データ、調子はどうだ?」
”サーキットの最短コースを走って観た。どうも前輪に負担がかかり過ぎるみたいだ。”
「ちょっと、まってよ、なんていう走りかたをしているの?アウトインアウト、スローインファーストアウトが基本でしょうに!」
 去っていったデータのマシンを覗き込むように目で追かけながらマナミが叫んだ。
「がっはっは、オモシレー奴だ。奴なら良いドライバーになるぜ!」
 ノウロウは大声で笑っていた。ラフォージはマナミのトランシーバーを取り上げマイクに向かって叫んだ。
「おいデータ、マシンを壊す訳には行かないんだぞ。頼むよ。」
”了解した。次からは負担がかからず最も速く走れる条件でプログラムして見よう”
 ラフォージはやれやれという表情で角の椅子に腰掛けた。タイヤは決勝で使用するものと同じノーマルタイヤを使用している。もう数周ラップを重ねるということになった。ラフォージはすることも無く、休む事にした。

 ピット前面が騒がしくなった。ピットクルーがストップウォッチを持っているマナミの周りに集まってきた。どよめきが起こっている。
「どういう事だ!?これではケントと変わらないタイムを出したというのか!?」
 ラフォージも慌てて駆け寄っていった。
「間違い無いわ、計測器も調べたもの。ボスに連絡しなくちゃ!」
 ドライバーの代りが見つかったとはしゃいでいるクルー達の中でラフォージがうろたえた。
「あ、あの、ちょっと。」
 ラフォージは走り去っていくマナミをどうすることも出来なかった。

 ☆ ☆ ☆

 艦隊本部からの連絡は概ね次のようなものであった。今回のUSS−HOKKAIDOのトラブルの調査班2名収容の頃から同宙域に亜空間干渉波が発生しているとのことである。連邦の特別機関時空変調研究所のタマック大尉の報告によれば、タイムワープが起き、過去からの時空の影響が出ているときにこの現象がおきる可能性が高いということであった。歴史に大きな変動が起きる可能性が高いことから急遽、タマック大尉を対策スタッフとして派遣されることとなった。
 タマック大尉を出迎えたのはライカー副長と、チーフ・ベイチョウであった。転送されてきたタマック大尉をみて、二人は唖然としながら顔を見合わせた。通常のバルカン女性士官のイメージと大幅に異なるのだ。なんと、髪の毛の色がショッキングピンクなのである。
「ああ、艦内をご案内いたしましょうか。」
「いえ、直にでも調査に取り掛かりたいわ。」
「わかりましたすぐにチーフ・オブライエンも来るでしょう。」
 ライカー副長はタマック大尉を転送コンソールへと案内した。
「クロニトン分子が異常発生していたようね。何故こんなに?」
 チーフ・ベイチョウがこれまでの経緯をかいつまんで説明していった。タマック大尉はその明晰な頭脳でチーフベイチョウの話しを聞き、何度もうなずいていた。ライカー副長は、入り口から入った瞬間怪訝そうにバルカン士官を見たチーフ・オブライエンを掴まえ、そっと耳打ちした。
「ほんとに、バルカン人なのか?」
「さぁ、亜人種でもいるのではないですか?」
 ライカー副長は艦内の案内のチャンスを逃したのを残念に思いながら転送ルームを後にし、救出に備えて上陸班を選出する事にした。
 調査班は年代と場所の特定がなかなか出来ない。
「クロニトン分子の流れがが所々大幅に乱れるんだ。これはいったいどういうことなのだろう。」
 現在エンタープライズ勤務のチーフ・ベイチョウがぼやくように話していた。
「これでは転送は無理だ。もっと場所を特定できれば何とかなるかもしれない。」
 パネルを睨むように覗いていたタマック大尉が2、3回コンソールのボタンを操作すると言った。
「少しずつ範囲を狭めてゆきましょう。」
 チーフ・オブライエンも交え、調査が進められていった。


 − QUALIFY −

 F1レースの公式予選の日が来た。結局データはチームオーナーのダンシンに無理矢理選手登録をさせられ、公式予選に望むことになった。ラフォージはデータにはあまり目立たないポジションにしておくようにと指示を出しておいた。
 データは、快調にタイムを伸ばした。というよりも、予選用のタイヤで3周トライしたが、いずれも1分24秒395というタイムなのである。T.アイズ選手に続くこの位置は現在12着で確かに目立たないが、ラフォージはあまり良い気分ではなかった。まずまずの成績で、ピットクルー達はおおはしゃぎである。
「あら、全くの同じタイムなんてそう出せるものじゃなくてよ。」
 ラフォージは話題をそらしたかった。
「ああ、そうだね、それより、ねぇところで、どうして事故なんておこしたんだい?」
 思い出したようにマナミは振り向いて話した。
「んん、なんでもね、第2コーナーの当たりでガレージの裏の芝生あたりに眩しい光が見えたんだって、他には誰も見ていないって言うので私が見に行ったんだけど、そこにあなたたちがいたって訳。貴方のその変わったサングラスにでも反射したのじゃないかしら。」
「眩しい光だって!?・・・それは、こう、ばああっていう白っぽいバーストのような・・・」
「ケントは眩しかったと言っていたわ、ほんと大袈裟なんだから、ミスしたのが照れくさいのね・・・・・・。」
 データが爆音とともにピットに戻ってきた。ピットクルー達は大歓迎でデータを迎えた。マナミの後の方の言葉は爆音で良く聞き取れなかったが、ラフォージはデータをガレージの隅に呼び寄せ、こそこそと話し掛けた。
「お、おい、まずいぞ、事故の原因が俺達のタイムワープにあったんだ、俺達がここに来なければ事故は起きず、ケントは無事でこのレースに参加したことになっているかもしれない。」
「ああ、その通りだ。今年の成績によっては、このチームの命運が大きく左右されることになる。」
「まずいぞ、まずいぞ、歴史に影響が出てしまうかもしれない。」
 ラフォージは慌ててマナミの方を見て聞き質した。
「ねぇ、マナミ、教えて欲しいんだけどケントだったら、どの程度の成績が期待できる!?」
「え!ああ、彼ならそうねぇ、マシンさえうまく仕上がれば、入賞はできるはずだわ。でもまだ、今シーズンは1点も上げていないのよ。このアメリカンシリーズでポイントをあげないと、スポンサーが契約を今季限りで打ち切るって言い出しているし・・・まあ、シーズン通して10ポイントでもあげられれば、チーム・ブレイブも安泰ってな感じなんだけど。」
「優勝の可能性はどうなんだい?」
「無理よ、うちのチームじゃまだまだブラバム、マクラーレン、ロータスに追いつけそうも無いわ。それに、ピケットやポロストがいるもの、まあ、運が良くて6着ね。でもデータならそれくらい楽に行くんじゃないかしら。」
 ラフォージは頭を抱えた。
「一体どっちなんだ、入賞したのか、しなかったのか、契約は結べたのか結べなかったのか。」
 未来の事を過去形で話すラフォージを見たマナミの不思議そうな顔に、ラフォージは何でもないと言いながら、データの肩に手を回してささやいた。
「とにかく、いつでも入賞圏内に入れるようにしておかないとまずい。あとは、救出班とコンタクトが取れるかどうかがかぎだ。」
 F1グランプリのレースは6位以内に入ればポイントをもらえる。データはうなずきながら言った。
「私は問題無い。いつでもスタンバイできている。」
 良し良しとラフォージがうなづいた。公式予選がおわった。


 ☆ ☆ ☆


 エンタープライズでは、場所の特定に手間取っていた。転送室ではチーフ・オブライエン、チーフ・ベイチョウ、タマック大尉らが必死に作業を進めていた。
 ピカード艦長は苛立っていた。大事なクルー二人が消えた。歴史に影響が出るかもしれない。しかも打つ手といえばタマック大尉、チーフ・オブライエン等の結果にかかっているのだ。副長席には副長が座って、じっとピカードを見ている。通信が入った。
”こちらタマック。ピカード艦長。”
「ブリッジだ。」
”試して見たいことがあるのですが。”
「言ってみたまえ。」
”クロニトン分子の軌跡を計算し、これでまず向こう側の音声が受信できるようになります。最も過去の事ではありますが。そのあと、場所を細部に特定し、ワープファクターを徐々に変調させ、こちらのメッセージを送ります。交信ができたら、推測とデータとを照らし合わせて、場所と年代が特定できるはずです。”
「うむ、ことは急を要する、試してくれ給え。何か変化があったら伝えてくれ。」
 通信を切ったピカード艦長は、副長席にいるライカーに指示を出した。
「上陸班は組めたか。」
「ええ、オブライエンにドクター、それと私が行きます。」
「そうだな大人数ではまずい。いつでも上陸できるようにスタンバイしておいてくれ。」
「わかりました。」
 ライカーはスックと立ち上がると、ドクタークラッシャーに転送室に集合するようコミュニケーターから通達し、自らも転送室へと急いだ。

 エンタープライズの転送室では通信手段を得ようと必死の作業が進められている。
「オブライエン、亜空間センサーと転送ビームの過去の軌跡をうまくリンクできるかしら。」
 チーフ・オブライエンはにんまりと笑って答えた。
「できますよお。ブリッジ!」
 素早くオブライエンがコミュニケーターバッジを叩く。
「亜空間センサーのデータとオペレーションをこちらにまわしてくれ。オペレーションは承認コードオミクロン01を使ってくれ。」
”は・・・?りょ、了解。”
ブリッジの戦術士官は一瞬何のことかわからなかったようだったが、これはオブライエンがエンタープライズに乗船していた頃、いつでもあらゆる対応が出来るよう改良を加えておいたものであった。これが今役に立ったのである。転送コンソールパネルの表示を確認すると、オブライエンは下部パネルに潜り込み、手元のドライブバーを突っ込んだ。
「ここを、こうして、こうやって、こう・・・・・っと。ベイチョウ!どうだ?」
「OKです。こちらで操作できます。」
 チーフベイチョウが応えると、タマック大尉も確認した。
「001領域のマップもモニター出来るといいわね。」
「簡単ですよ。」
 オブライエンがそう言いちょんちょんといじると、オペレーションパネルに大きな青いマトリックス表示があらわれた。
「これで、いいわ。」
と、タマック大尉は目を光らせ、パネルの操作をはじめた。
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