防御シールド




Shields up !

防御シールドは、空間の特定の部分に張り巡らす特殊な重力場である。船殻にあるデフレクターによって作り出されるもので、いわゆるバリアーである。

Star Trek Technical Manual (STTNG)によると、
デフレクターシステムは、重力子(重力を伝達する素粒子、未発見)放出によって空間のある特定の場所を、局所的に弯曲させる。発生したフィールドは船殻に配置された多数の整波器により、船体に沿った形に整えられる。このフィールドに物理的な力が加わると強力な反発力が発生する。その結果、亜光速で飛び込んでくる素粒子や岩石などから船を守る事ができる。衝突が起きると、フィールドのエネルギーは衝突部位に集中して、より強い力を発生させる。いわばシールドは反重力スクリーンである。何かがスクリーンに衝突すると、シールドは反転重力で対象物を押し返す。例えば光子魚雷が衝突すると、硬い壁に当たったかのように勘違いして爆発してしまう。【シールドは、最大のエネルギー伝達媒体である光子さえも遮る事が出来るが、光子には質量が無いので、実際には相当困難な事である】

シールドは重力波発生装置で発生した後、亜空間歪増幅器(subspace field distortion amplifiers)を通る際に位相を揃えられる。Enterprise-Dの場合、通常の航行中の出力は1152メガワット、緊急時には2688メガワット出せる。もし短時間ならばその数百倍のエネルギーを集中させることも出来るらしい。

攻撃を受けた場合、それを食い止めるべくシールドエネルギーはその部位に集中するが、パワーリザーバーの容量には限界があるので、攻撃を受ける度にシールド強度が減少する。エネルギーが無くなればシールドは消失する。またシールドが受けた衝撃は間接的に船体に伝わるために、強い攻撃を何度も受ければデフレクターそのものが破損する事もある。

船の総合的な戦力を評価するとき、シールドが占める割合は大きい。シールドのない 21世紀現在では戦艦の戦力は主として火力で決まってしまうが、この時代では攻撃力もさることながら、シールドにはそれ以上の価値がある。もしシールドがなければ、一撃のフェイザーで Enterprise-Dといえども沈んでしまう。

シールドは外敵から身を守るためだけでなく、何らかの原因で船体が破損した時、部分的にシールドの強度を調節することによって船体の歪みを矯正するためにも用いられる (Struct Integrity Field System)。また、たとえ船体の一部が欠損しても、シールドが見えない壁を作って空気の流出を防ぐこともできる。(ST7:Generations)

デフレクターは船体全体に散らばって配置されているが、Enterprise-Dの場合メインデフレクターは円盤部の下、戦闘部の前部にある。ここからは特に強い重力波パルス等を打ち出すことが可能で、一種の武器のように使うことも出来る(TOS, TNG, ST7)。ここには長距離センサーなどの重要な測定装置がぎっしりと詰まっている。また艦内の重要箇所と密接に繋がっており、メインデフレクターに損傷を受けると艦が爆発する恐れがあるので、弱点ともいえる (ST8:First Contact, "The Jem'Hadar" [DS9])。

恒星やブラックホールが作る自然な重力場の場合は対象が何であっても影響を及ぼすが、シールドの重力場の場合は対象を既知の物体やエネルギーパターンに絞って機能を最大限に発揮するように設計されているため、相手が未知の武器を使用した場合は素通りすることがある。例えば、ドミニオンのジェムハダーは高エネルギーのポーラロン・ビーム (phased polaron beam)を武器として使用する。宇宙艦隊が最初にジェムハダーと対戦した時、このビームはシールドを素通りして小型の攻撃艇に Galaxy級 USS Odysseyが簡単に撃破されてしまった ("The Jem'Hadar" [DS9])。これ以後艦隊ではシールドを強化調整し、容易には撃ち抜かれなくなったようではある。【その他を参照】

シールドは重力波であるから、波長がある。通常は波長を変える必要が無いが、戦闘時にはランダムに変更される(combat shield)。もし波長が敵の知るところとなれば、それと同調させることにより相手の侵入を許してしまうからである。同調できれば、シールドを通して転送やスキャンも可能で、光子魚雷の侵入さえ許してしまう(ST7:Generations)。このような性質上、もしも敵の技術が数段勝っている場合は、シールドは何の役にも立たない。事実、正体不明のエイリアンに、幾度となくシールドを素通りされている。

同じ宇宙艦隊であっても、24世紀の宇宙艦隊のテクノロジーからみると、23世紀のシールドは隙だらけのようで、USS DefiantのクルーがUSS Enterprise(初代)の艦内へ簡単に転送されてしまっている ("Trials and Tribble-ations" [DS9])。これは、23世紀当時のシールドが単純な波であって、24世紀の進んだ転送技術ならばタイミングに合わせて転送することが可能だったためである。しかしその後、シールドはマルチ・フェーズ(多位相)となり、時間的にも隙がなくなり、エネルギー密度も格段に上がっている。

ボーグの用いるシールド(護身用、ボーグシップ用)は一般のシールドとは明らかに異なったメカニズムを持つ。上述のように、一般のシールドは『特定の波長のエネルギーのみ通過できる』が、ボーグの場合は『特定の波長のエネルギーのみ阻止する』という性質を持つ。そして学習機能を持っているので、対ボーグ戦では最初の攻撃は有効であっても2回目からは無効となる。そのためフェイザーや重力波の波長を微妙に変化させて攻撃しても、変化させるにも限度があるため結局最終的には手詰まりになる。手の内を出し切ると、ボーグの集中砲火を浴びるだけとなる ("The Best of Both Worlds" [TNG], ST8: First Contact)。このようなシールド方法は、個々のボーグを守る事には主眼を置かず、多少被害を出しても最終的に全体として勝利を納める事を最優先しているためであると思われる。宇宙艦隊とは全く違う発想で、アリやハチのやり方に類似しており、極めて冷徹で不気味なシステムといえる。

この変わった性質のシールドは、時として面白い戦闘シーンを我々に提供してくれる。ピカード艦長の機関銃攻撃や、ウォーフ少佐のバトラフ攻撃が有効であったのは、これらがボーグにとって経験したことのない武器だったからである (ST8: First Contact)。弾丸の速度やバトラフを振り回す速度を変えれば理論的には2回目からも一応有効のはずであるが、あまり期待できないだろう。しかしフェイザーなどのビームエネルギーはシールドで空中に放散されて無力化されるが、弾丸などの「暴力的な」運動エネルギーは放散されないので、鋼鉄の鎧くらいの効果しか期待出来ないであろう。たとえ殺傷は出来なくとも、なぎ倒すくらいのダメージは与えられるはずである。

シールドの艦内(基地内)での応用として、フォースフィールド(force field)を作ることが出来る。TOSでは留置場の鉄柵代わりに用いる以外はさほど出番が無かったが、TNG以降は頻用されている。かつてはフィールドを発生させるために特定の場所に発生装置が必要であったが、TNGからは艦内のあらゆる場所で、自由な形の「見えない容器」を作る事ができるようになり、たとえブリッジ内でも可能となった ("Allegiance" [TNG])。艦内に侵入した敵を一ヶ所にまとめて監禁するために、転送装置をカーテン状のフィールドで覆った事もある ("Rascals" [TNG])。また爆発性の物体や未知の病原体を含む物体などを、フィールドの中に閉じこめて実験・観察することも出来る。

フィールドの形は自由に設定できるようだが、おそらくこれはホロデッキ技術の発達と密接な関連があるのだろう。手法としては、予め設定した形のフィールドを作っておき、後から問題の物体を艦内転送でフィールド内に入れ込む方法を採る事が多い。たとえフィールドが閉じた形状であっても、重力子ビームの周波を転送ビームに同期させれば内部に転送できる。フィールドはコマンドをパネルから入力して発生させる。コンピューターに口頭命令を下すだけでも一応は作れるようだ。

一旦フィールドが形成されると、原子・分子や素粒子などは透過できなくなる。ただ光や電磁波などは通常の状態であれば自由に透過でき、一定のエネルギーを超えるとフィールドが押さえ込むようである。これは艦自身の防御シールドも同様で、シールドを張ったからといってすぐに鏡のように何でも反射するのではない。最初は「ガラス状」だが、もしも内部で爆発などが起これば「硬い鏡」(魔法瓶)に変化してエネルギーをフィールド内部に抑え込む。しかし音は空気の振動であるから、最初から完全にシャットアウトされるはずである。内部の音を拾うには、何らかの方法でモニターせねばならない。

なお、未知のウイルスに感染した患者を隔離するために透明な膜で患者を包む技術が出てくるが、これはスティロライト (Styrolite)という特殊な樹脂様のフィルムである ("Unnatural Selection" [TNG])。

デフレクターもワープエンジンも、空間を弯曲させるが、根本的に意味が異なる。デフレクターは重力による歪みを作るのであって、古典物理学(一般相対性理論)の範囲内の現象である。一方、ワープエンジンにより作られるフィールドは亜空間フィールドであり、重力場と違って吸い込まれたりはじき飛ばされたりしない。これは物理法則が異なる空間で、20世紀のいかなる計測機器でも観測は不可能である。【亜空間の項を参照】 しかし両者は深い関係にあってしかも競合関係にあり、同時に存在すると互いに抑制的に作用する。このためワープエンジン周辺ではシールドが弱くなるという弱点をもつ ("Preemptive Strike"[TNG])。




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